2015年1月2日金曜日

「金色のキャベツ」堀米薫

書名: 金色のキャベツ
著者名:堀米薫
出版社: そうえん社
好きな場所: 農業機械が大型化したぶん、農家の仕事は危険といつもとなりあわせなのよ
所在ページ:p84
ひとこと:先日『モーモー村のおくりもの』(文研出版)を上梓されたばかりの堀米さんが、また農業に関する物語を出されました。
 今度は、キャベツ畑のお話です。

 東京郊外の住宅に住んでいる風香は小学五年生の女の子です。パパは会社勤めで、ママはアートフラワーの講師をしていて、忙しく、風香自身も塾やピアノとやることがいっぱいで、塾から家に帰ると夜の8時をまわっています。
 ある日、家に段ボールが来て、中にはキャベツと風香宛ての手紙が入っていました。パパの異母兄弟、仁おじさんからの手紙です。おじさんは、都内でも有数の進学校を卒業したあと、農業研修に行ったまま、野菜農家をしています。キャベツはおじさんの畑のものでした。「遊びに来い、いつでも待っている」というその手紙の文句に魅かれた風香は、両親には内緒で、おじさんのところにでかけてしまいます。

 風香が行ったところは、広大なキャベツ畑です。そこでは、スーパーで安売りされているキャベツが、引用のような危険をも伴って、大変な苦労で作られていたのです。でも、みんなは希望と、技術と、知識と、工夫と、誇りをもって、キャベツを作っていたのでした。
 現役農家の奥様である堀米さんならではのディテールでキャベツ生産現場の生活が語られます。堀米家もお米や牛肉を作っておられますが、きっとそのような希望をもって、大変な中に農業の活路をなんとか見出そうとされているのでしょう。

 前に私も野辺山あたりをひとりでてくてくと歩いたことがあります。黙って国道を歩いていると、左右はレタス畑だったのですが、ほんとうにどこまでもどこまでも延々とレタスの畝が続き、国道は他の車もあまりないのですが、外国製のトラクターの後ろに荷台をつけて、その荷台にレタスの箱を乗せたものが、ものすごいスピードで走ってゆきました。それもひっきりなしです。レタスを供給するためには、これだけの広さとスピードが必要なのだなと思った次第です。都会の者にはわからないいろいろなことが、世の中にはたくさんあるのですね。

 このお作品は、私もお世話になっている同人「季節風」の秋の大会(愛の物語分科会)に出されたものだそうです。こうやって大会参加作品が本になると、ほんとうにがんばらなくっちゃという気持ちになるから不思議です。