2014年6月15日日曜日

「七夕の月」佐々木ひとみ ポプラ社

書名: 七夕の月
著者名:佐々木ひとみ 
出版社:ポプラ社
好きな場所: わたしは、たとえおまつりが中止になっても、七夕かざりをつくろうと心に決めていました。
所在ページ:P98
ひとこと:

これも季節風の先輩で、椋鳩十児童文学賞を受賞された佐々木ひとみさんのお作です。『ぼくとあいつのラストラン』『ドラゴンのなみだ』『もののけ温泉 滝の湯へいらっしゃい』同様、ひとみさんのおっしゃる「土着の魂、旅人の目」を体現されたお作だと思いました。

仙台といえば七夕。でもその七夕を支えるのは、商店街の人々、特に老舗の紙店です。世に七夕まつりをする商店街は多くありますが、そのほとんどはビニールの吹き流しにビニールの花という昨今、この紙の伝統...は貴重です。

その紙店のご当主の子として、仙台に来た四年生のぼくは、ライバルだった紙店の子、杉野といっしょに夏休みの自由研究に仙台七夕をとりあげることになります。おりしもひいおばあちゃんが病気で入院しており、ぼくはひいおばあちゃんにあるつかみどころのないおねがいをされます……。

というわけで、ぼくはまさに「旅人」として仙台に来て、引用のように仙台の伝統と震災をめぐる因縁のなかに身を投じるのでした。

佐々木さんは、仙台在住で、そして震災を仙台で体験された方ですが、でもご出身は仙台ではない。その旅人の目が客観的なぼくの目となって物語を進めておられると思います。その目があるからこそ、仙台七夕という大事な行事が、どこの人にもよくわかるものとして立ち上がってくるのです。