2014年3月26日水曜日

あける25 サークル・拓

書名: あける25
著者名: サークル・拓
 最上一平さん、安東みきえさん、にしがきようこさん、ばんひろこさん、鳥野美智子さんなど名を連ねておられます。今回は昨年急逝された浅井利之さんの追悼号で、表紙は白、カラーで浅井さんの手になる「夏山回想 後立山連峰」のスケッチが表紙絵です。
 浅井さんは、「ファンタジー研究会」の主宰者で、季節風の「ファンタジー分科会」の司会者もされておられた方です。
 拓の合評のことは、あちこちでうかがったことがありますが、とても厳しい同人で、作品の質に関しては容赦がないという印象があります。でも、ここの追悼文集を読むと、浅井さんはその中にあっても、「作品世界に深く分け入り、手を抜くことのない鋭い批評をしてくれた。しかも批判に傾きがちな作品には擁護にまわるのが浅井さんだった。どんな拙い作品にもどこかしら必ず良いところを探り当て『ここがいいなあ』といってくれた」(P200 「浅井さんが架けた橋」安東みきえ)というような方だったということがよくわかります。そしてとてもいい方だったということも。
 
 「いい人からなくなるんだよね」という言葉、私は最近、別のところで聞きました。うんと簡単に肯定してしまいたくない気持ちと、そうだよねーといいたい気持ちと、両方があります。アンビバレント。
 仲間のみなさんはきっとショックでいらしたでしょうが、こうやって追悼文を書かれることで、昇華されているのだなあと思いました。

 それにしても、仲間ってありがたいものですね。今回25号をくださった櫻井祐子さんも、私には季節風の仲間です。
 櫻井さんは「毛糸のぼうしとちゃいろのボタン」という幼年ものを掲載しておられます。季節風でもおばあちゃんとのわらびとりの情景など描かれている櫻井さん、この短編でも「ばばちゃん」に毛糸のぼうしを編んでもらっている場面が、鮮やかに浮かんできます。編み物ってほんとうにふしぎですよね、糸が物体に変わる様子、子どものころ目をこらして見つめていたのを思い出します。いってみれば、一次元が三次元になるありさまです。