2014年1月11日土曜日

「亡霊クラブ 怪の教室 沈黙のティーカップ」麻生かづこ

書名: 亡霊クラブ 怪の教室 沈黙のティーカップ
著者名:麻生かづこ
出版社:ポプラ社
好きな場所:「うそ……。 もうもどれないの?」
 花子さんがこくりとうなずく。
「パソコンのサイトももうないよ」
「削除されました」
 人体模型がカラカラ笑う。
所在ページ: p60
ひとこと:新しいポプラの女の子向けの文庫「ポプラポケット文庫 ガールズ」の中の麻生かづこさんの「亡霊クラブ 怪の教室」シリーズ第二弾です。
 「新感覚ガールズ怪談」と帯にあるように、女の子向けの怪談です。
 一般に女性は人間関係に敏感と言われています。怪談は女の子も男の子も好きですが、やはり女の子向けとなると、仕掛けや不思議そものよりあの人はどうだ、この人はどうだというような女の子同士の関係が大事になることでしょう。それも怪談となると、やはり恨みや嫉妬のような、どちらかというとどろどろしたものが必要ですが、これは書けそうでいていざやってみるとわかりますが、なかなか書けません。そこを麻生さんはさすがの筆致でこれでもか、これでもかというように女の子同士の気持ちを書かれています。このどろどろ感が怖さを増します。

 また、このお話の特徴は、第一巻目もそうでしたが、あちらの世界というか「怪の教室」というところにおとしこまれた子どもたちが、どうなったのか、ということも描いていることです。そこには、花子さんや、人体模型、二宮金次郎というような学校怪談のヒーローたちがいて、子どもたちをなぐさめてくれたりするのがおもしろい。

 
 引用は、第一話のその「怪の教室」での会話ですが、主人公はサイトを削除されて帰れなくなってしまうのです。おもしろいのは実はそのあとです。第一話で言及されたこの削除、同じシチュエーションを違う子を主人公として描いた第四話で理由がわかります。そしてもうひとつ逆転があって……。というわけで、ほーんと気の抜けない怖い「怪の教室」シリーズです。

 麻生さんは昨年9月と今年1月と続けてこのシリーズを出され、それはまだまだ続くもよう。ほかにも、ノンフィクション『ハセイルカのハルカが泳いだ日』(佼成出版)や、『考える力を育てるおはなし366』(PHP研究所)などなどアンソロジー、幼年ものでは『スッパーばあちゃん』の毎日小学生新聞連載や、チャイルドブックなどでも幅広いご活躍です。