2013年12月25日水曜日

「うばかわ姫」越水利江子(読楽2014年1月号)

書名:『読楽2014年1月号』所収「うばかわ姫」
著者名: 越水利江子
出版社: 徳間書店
好きな場所: 「助けぬでもないが、お礼に何をくれるんや?」
 老婆がいった。
「なんでもっ」 
 野朱はつい、そんなふうにいってしまった。
所在ページ: p63
ひとこと:『読楽』新春号です。読楽は「読む」を楽しむ総合エンタテイメント文芸誌とのことで、ミステリー、時代物、妖異幻怪もの、マンガ、対談などなど各種の短編、連載が掲載されていますが、今回の特集は「時代小説ワンダー2014」ということで、時代小説の短編が四編掲載されています。
 四編のうち「うばかわ姫」が季節風の幹事、越水利江子さんの作品です。
 
 
 老婆に助けられた美女、野朱は、引用のような事情で、小袖を交換してしまいます。そしてその結果……。あとはおたのしみ。
 『忍剣花百姫伝』『恋する新撰組』シリーズなどで人気の越水さんならではのさすがのご発想と、『風のラヴソング』で芸術選奨新人賞、日本児童文学者協会新人賞をもらわれたご文章です。子ども向きでは今まで書き切れなかった部分を発揮されたとのことです。これを契機にさらなるご発展が期待されます。
 越水さんが幹事をされている季節風に、わたしも2009年から入れていただいています。季節風は児童文学の同人ですが、大人の小説を書く方もたくさんおられます。もちろん子ども向きの題材や、子どもにわかりやすい書き方というものはみなさんちゃんと認識されていると思いますが、基本的には、よいものを書くということに関しては大人も子どももない、という考えです。だから、わたしの経験でも、書いたものが大人向きの題材や内容だからといって否定されたことはありませんでした。むしろ、じゃあ、どうやったらいちばんよい形になるかな、という方向で考えてくださいます。それが証拠に、今度、会員を対象に大人向けの短編が募集され、それが本になることになっているようです(でもすごい書き手さんばかりなので、もし書けて出したとしても当選する気はさっぱりしませんが(笑))。でも、いいものはシームレス、そうありたいなと思います。