書名:もののけ温泉 滝の湯へいらっしゃい
著者名:佐々木ひとみ
出版社:
岩崎書店
好きな場所:
「どうしたら手際よくできるか、かんがえな。仕事ってのはね、指図されてやるもんじゃないんだよ。自分の頭でかんがえてやるもんなのさ」
所在ページ:
p70
ひとこと:季節風の先輩、佐々木ひとみさんの新作です。佐々木さんのデビュー作「ぼくとあいつのラストラン」はファンタジーで第二十回椋鳩十児童文学賞をとられたものですが、次のお作「ドラゴンのなみだ」はリアリズムでした。
さて今度は、と楽しみにしていましたら、こんどはよりファンタジー色の強いもののけ系のお話。いつも季節風で拝読していたリアリズムの筆はもちろん健在で、仙台から電車で二時間という湯の森温泉郷は、鳴子温泉がモデルということですが、下駄の音から、たそがれ時の街のざわめき、温泉街の風情が余すところなく描かれて、ほんとうにあったことのように思えます。
湯の森温泉の共同浴場滝の湯は、午後六時から六時四十分までは開いていません。そこへ主人公、小学四年生のかえでは、あと十分が待てずに入ってしまいます。その因果で、滝の湯を手伝うことに。
引用は、番台の主、糸子ババがかえでにかけた言葉です。ほんとだよね、どうやったら手際よくできるか、それを考えながらやるのが楽しい。
かえでの父の実家、旅館のとらやさんの看板猫トラもがんばって働いています。
表紙の絵も昭和風レトロですてき。小さいころよくやったぬりえのようです。