2013年8月29日木曜日

句集『だだすこ』北柳あぶみ

書名: だだすこ
著者名:北柳あぶみ
出版社: 童子吟社
好きな場所: ストーブと事典残して夜逃げかな
所在ページ: p45
ひとこと:季節風の先輩おおぎやなぎちかさんは、児童文学でも大きな賞をとられた方ですが、俳句の世界ではもう二十年選手で、角川の歳時記にも句ののるような方です。
 そのおおぎやなぎさんが、今回、句集を出されました。
 題は『だだすこ』。あとがきには、「句集名の『だだすこ』とは、北上市の鬼剣舞、花巻市の鹿踊りのときに口に上る太鼓の擬音で、宮沢賢治も詩『原体剣舞連』で、dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dahとローマ字書きに書いている」と記されています。お作「だだすこと口で囃しておどりけり」にちなんだ題です。
 おおぎやなぎさんは、秋田のお生まれですが、岩手の北上にも住まわれたこともあり、直近ではお舅さんの介護に北上と東京を往復しておられました。その軌跡が、帯の「ふるさとや春泥かくもねちつこく」という句にも表れています。またこの句集全体を貫くのはふるさとという言葉だと思います。
 引用は、夜逃げのあとにストーブと辞典が残っていたというシーンですが、これがなぜ私にとって印象的かというと、おおぎやなぎさんが季節風に投稿しておられた「ゆっこ」という主人公のシリーズがあり、それにこのシーンがでてくるのですね。とてもすてきなシリーズです。ぜひご本になってほしいと思っています。
 俳句も物語も同じ方が作るのですから、同じ局面があります。でも表すものはちょっとちがう。
 俳句が物語を刺激し、物語が俳句を刺激しながら、おおぎやなぎさんの文学は進んでゆくのだと思います。
 ちなみにカバーの絵は、大学時代のおおぎやなぎさんを恩師の方が描かれたものだそうです。うーん、いつもノンシャランと地味にしていらっしゃいますが、実は彼女、秋田美人です。
 
 季節風の前の代表後藤竜二さんへの追悼句もありました。

  終生を熱く青くと炭継げり

 うん、私もいつか燃え尽きますが、一個の炭になるべくがんばります。