2013年3月20日水曜日

命のバトン 堀米薫

書名: 命のバトン 津波を生きぬいた奇跡の牛の物語
著者名: 堀米薫
出版社: 佼成出版社
好きな場所: 2011年6月20日、いよいよ「宮城県同志会ホルスタイン共進会」の日がやってきました。東日本大震災発生からわずか三か月後、震災のきずあとが残る中での開催でした。
所在ページ: p87
ひとこと:「みやのう」とは宮城農業高校の略称です。「ミヤノウ」という名号(正式な名前)のついた牛は、宮城農業高校の先輩たちが、代々守ってきた牛のDNAを受け継ぐ牛だという証拠なのです。
 東日本大震災の日、津波はみやのうにも襲いかかりました。先生がたは、もちろん生徒の安全も確保しなければなりませんでしたが……。
 
 命がけで牛を逃がしそうとしたみやのうの教師たち、自分たちの生活のさきゆきもわからないのに逃げた牛を保護してくれた近所のひとたち、預かってくれた近隣の農業高校、他校に分散しつつも牛の世話をしつづけた生徒たち。連携プレイが、みやのうの牛のDNAを守ります。

 
 ところで、私がこの本を読んでびっくりしたのは引用のように震災のたった三か月後に、共進会が開かれていたことでした。三か月後といえば、私のように東京に住んでいる者だって、まだショックもさめやらずどうしていいかとうろうろしていたぐらいの時期です。その中をみやのうの生徒さんたちは、立派な牛を育てるという自分たちの使命を全うしようとしていたのです。 困難の中にも、目的を失わず進むことの大事さを思います。

 ところで著者の堀米さんは肉牛肥育を行う農家の主婦です。本書と同じ「感動ノンフィクションシリーズ」には「ぼくらは闘牛小学生!」という著書があり、これも牛と震災を扱ったものです。そして堀米さんは「ぼくらは……」の執筆中に東日本大震災の被害にあわれました。本書は震災後、牛と命を考えぬいた末のご上梓です。