2012年4月14日土曜日

航海のための天気予報利用学

書名: 航海のための天気予報利用学 ロングクルーズを夢見るあなたに
著者名: 笠原久司
出版社: 舵社
好きな場所: 命がかかっている海の気象判断の場面で、迷いに迷った不安な天気予報を無理やりズバリと出されても、それは迷惑以外のなにものでもないでしょう。
所在ページ:p34
ひとこと:笠原さんは、もともとは電機メーカーの技術者でいらしたのですが、天気予報に興味をもたれて気象予報士の資格を取られ、当時規制緩和されたばかりの気象予報に携わられて、テレビ朝日の「ニュースステーション」の天気予報番組の統括デスクをされていた方です。
そのあと、すごいことには、ご自分のヨットで、日中航海しては次の港に行くという形で、半年かけて、本州を一周されました。
その間、携帯をノートパソコンにつなぐという技術者ならではの方法を使って(今なら簡単ですが当時はi-modeなど携帯メールがではじめたばかりのころで、データ通信は最先端です)、お得意の気象予報を自らされていたわけですが、そのご経験がこの本になっています。航海に出ようとされる方には、本当にバイブルになるに違いありません。

引用箇所は、もともと規制の厳しかった天気予報には従来「ズバリの不文律」というものがあり、つまり予報者がどちらかなと思っても、どちらかに決めて発表しなければならなかった。この不文律があるために、どちらかに決めてなされる天気予報には「当たる・当たらない」という評価がされていた。天気予報は自由化されてさまざまな予報がなされるようになったが、受け取り手の感覚は依然として「当たる・当たらない」で終わっている。
それは本当に利用者にとって有益なことなのか、「ズバリの不文律」の呪縛から逃れて、天気予報の確からしさを把握することが必要なのではないか、という考えを述べられているところです。

つまり、結論のみを受け取るのではなく、その結論に至った経過を知ることで、変化に対応できる。

とても大事なことだと思います。なんでもそうですが、結局よくわからないときには、だれが正しそうかということで、人は情報を判断します。情報が自由化されていても、わからないという人には同じことなのです。つまりだれが信じられるか信じられないか、ということにかかってきます。
そうではなくて、ある程度の原理を全部ではなくていいから、おおまかに理解し、こういうことが起きそうだ、という変化の範囲を知ること、これが航海における気象判断だけではなく、いろいろなことで大事な時代になっていると思います。