2011年9月5日月曜日

復活の日 ジュブナイル版

書名:復活の日 ジュブナイル版
原作:小松左京
文:新井リュウジ
出版社:ポプラ社
好きな場所:でも、考えてみてください。こんな恐ろしい兵器を必要とするほど、我々は飢えていましたか?
所在ページ:p133
ひとこと:小松左京のSF作品で映画にもなった「復活の日」を新井リュウジ氏が、今のジュニア向けに2009年に書きなおされたものです。
新井氏は、まんがの原作や、ラジオ劇場「ヒーロークロスライン」のプロデュースなどもなさっている方で、先月発売された集英社みらい文庫の「めちゃコワ!最凶怪談」では編者をされており、同書には同氏のこわい「ぼくが嫌われた理由」という、怪談というにはあまりにおそろしい実話(!?)が掲載されています。

この「復活の日」は、毒性の高いインフルエンザによって、人類が滅亡することになる、という今にしてみると、とても現実的で身近ともいえるストーリーですが、書かれたのは1964年という冷戦時代。東京オリンピックの直前で、私は覚えていますが、東京ではまだ丸ノ内線の工事をしていたような時代、日本はまだ先進国とも認められていないようなころのこと。
手塚治虫も、藤子不二雄もそうですけど、この時代に、こんな話を思いついて書かれた小松左京(偉人は呼び捨てという日本の慣行にしたがってあえて呼び捨て)の想像力はものすごいと思います。
でもやっぱりそのままでは今、ソ連が崩壊してロシアとなった今の時代には受け入れられにくい。とくに若い人には、よく事情がわからないはずです。
その点を、新井氏はみごとにほこりを払って、今読んでもまったく違和感のないジュブナイル版にしあげておられます。そうして読むと、なおさら、新井氏があとがきで書かれているように「少しも古くなっていない」ことがよくわかります。そして新井氏のおっしゃるとおり、作者は「予言者」であったこともよくわかります。

子どものころ、私はSFファンでした。でも今のようにSFというジャンルは尊重されておらず、大人からは「そんなもん読んで……もっとちゃんとしたもの読めば」といわれるような肩身の狭いふんいきでした。
でもそのころ、たとえばアシモフの小説にでてきた「マイクに向かってしゃべるとタイプしてくれる機械」は現実になっているし、ロボットも人工知能も現実です。スタートレックのカーク船長は腕時計のようなものを使って通信していましたが、今ではみんなが持っています。
今、SFは特殊なジャンルではなくて、設定のちょっとした差にすぎなかったりします。
でもこのころのSFは、予言をしていたのですね。大戦後の世界を創造する、そういうエネルギーがあの時代にはあったのかもしれません。ひさしぶりにその空気をすって、引用もそうですが、大人としてがんばってビジョンを出せ、といわれているような気がしました。

新井リュウジ氏プロデュースのヒーロークロスライン、ラジオ劇場はこちらです。
http://hxl-hour.com/
新井氏はここで「ニードルアイ」の原作も書いておられます。ニードルアイは、栃木県が舞台の変身ヒロインドラマです。
こちら→http://hxl-hour.com/contents/needleeye..