2011年4月23日土曜日

「はやぶさ」式思考法 日本を活性化させる24の提言

書名:「はやぶさ」式思考法 日本を活性化させる24の提言
著者名:川口淳一郎
出版社:飛鳥新社
好きな場所:社会生活を営む大多数の人間は、評価を求めていきますから、適用される評価法に合わせて行動様式を変えます。失敗がカウントされるなら、失敗を減らすように努めるし、成功がカウントされるなら成功を増大させようと努めるわけです。
所在ページ:15
ひとこと:JAXAで「はやぶさ」のプロジェクトリーダーの川口さんといえば、小惑星イトカワのサンプルを持ち帰りみずからは燃え尽きた無人探査機(というと若い人には「技術実証機」と直されることでしょうが 笑)「はやぶさ」を擬人化して愛する若者たちの「ネ申」(同世代向け注 これで「かみ」と読みます 笑)であって、はやぶさと通信の取れなかった時期に、「毎日ポットのお湯をあたたかくしておく」ということで、チームの士気を高めたという話は、伝説になっているぐらいです。
 その方が、はやぶさのプロジェクトを例に、日本の活性化について語っておられます。
 いちばんのコアな部分は、減点法でゆかないということ。コンプライアンスにこだわらないということ。コンプライアンスのことは、先日、フェイスブックの創始者ザッカーバーグの伝記的映画を見たときにも、強く感じたことでした。やっぱりこの本を読んでも創造とコンプライアンスは相性が悪いと思います。
 でも、この本ではそれより、前者の減点法でゆかない、加点法でゆくというのに、うんうんと思い当たることがありました。

 それは季節風の前の代表故後藤竜二さんのやりかたです。
 いい投稿があると「いいよ、いいよ」「カンペキ」「すごい」と心からほめておられた。私はいただいたことがないけど、送って後藤家に届いたか届かないかのうちに「いいよ」と電話がかかってきたという伝説もたくさん。
 後藤さんがほめておられたお作品は、季節風に入る前に、いろいろな合評にそれなりに出たことのある身としては、え、と思うようなこともなかったわけではなくて、たとえば、会話の相手が誰かはっきりしないとか、重複する言葉が一文や隣接する文に多いとか、技術的なこと。それから児童文学では一般に不適切と思われていることを扱っているとか、子ども向きの内容でないとか。私はあんまり直にお話させていただいたことがないけれど、人伝えに聞けばそれも「いいんだ、いいんだ」ということでした。
 ほんとうに書いていいのかわるいのか、同人誌だから許されるという意味なのか、こちらとしては混乱したりするわけですし、後藤さんにほめていただいたんです、などというと、ほかからは「本にもなっていない作品を、どうしてそんなに(えらい作家さんが)ほめるのかよくわからない」と言われることもあります。
 でも、今思い当たると、それってただほめて育てるというより、「加点法」だったんだなあと。
 「なんとかこのもやもやとした観念を形に(文章や物語に)してやろう」と思って臨むときは、いくらでも思いつきが浮かぶけど、「こういわれるだろうな」「ここはだめだろうな」「こういう評価をされたいな」と思うと、とたんになんだかうまくゆかなくなってしまうということは、私みたいな半端ものにもよくあること。だから、ぶっちゃけた話、賞がとりたいなどと思って書くと、たいてい一次選考にもひっかかってなかったりするわけで。
 なんでかなあと思ったけど、自分の中で「加点法」から「減点法」にシフトしたとき、ある種の思考が止まるんだ、とこの本を読んで思い当たったのでした。
 自分のことならともかく、合評のときなんて人さまのお作品に何か言うときは、気をつけなきゃなと思うことです。
 でも、後藤さんみたいに手放しに「いいよ」は言えない。やっぱなんか言っちゃうよ。そこが凡人(笑)