2010年10月15日金曜日

季節風104号

書名:季節風104号
出版社:全国児童文学同人誌連絡会
好きな場所:天の一日は地上の百年と言われるが、海の下はもしかしたら逆なのか?
所在ページ:62
ひとこと:引用は邱力萍(チュ・リーピン)さんのお作品「似島」です。
 南京大虐殺と広島の原爆、いずれもたくさんの理由と理屈がつけられて、議論は果てしないことと思いますが、決して結論を出さずに、りくつではなく、似島というところを訪れた一人の中国人の正直な気持ちとして現されているのがとてもよかったです。一方で引用のように海に入る、日に焼ける、お刺身を食べる、そういう現世的なこまごましたことを、心の中、考え、風景、様々な描写でおりまぜながら、淡々と進んでゆくのがとてもすてきでした。
 邱さんのお作品、もっと読みたいなあ。

 今号は後藤竜二さんの追悼号なので、後藤さんの『季節風』創刊等の「創刊にあたって」の「他人の夢で生きられるかよ」という文が再掲載されていたり、あさのあつこさんの追悼文「なにも書けません。」という感動的な文章があったりします。

 でも創作作品もすごくて井嶋敦子さんの詩「ごびのげんき」や、ご常連のいとうみくさん、北原未夏子さんの創作作品や、この前合評会でお目にかかった松弥龍さん、森くま堂さんのお作品がずらずらと。森くま堂さんは去年の大会で「んの反乱」というナンセンスを書かれて合評会ではすごい評判だったのですが、今回はぜんぜん違ってリアリズムで意欲作、すごいと思いました。
 小薬健一さんはこの前栃木でお目にかかったのですが入会したて初投稿「父ちゃんのサポパン」すごいおもしろい。
 後藤さんの期待しておられた堀米薫さんのレポ「農業の現場から」は最終回で、林業に関することです。きっときっと、後藤さんが「よし」とおっしゃっているだろうなあと思いました。
 
 後藤さんの「他人の夢で生きられるかよ」というのはもちろん自分の夢でという意味だけど、きっと反語でもあり、アカの他人の夢が自分の夢になって新人を押して押して押してこられた、その生涯を思うと、やっぱりうるうるしました。